全国農薬安全指導者協議会(安全協)
発足の経緯
昭和48年7月12日、全国農薬協同組合(全農薬)では、内部組織の企画委員会が「社団法人全国農薬安全協会」の設立と「全農薬安全防除指導員」養成を提案。諸事情で「社団法人全国農薬安全協会」の設立は頓挫したが、この提案は今日の全国農薬安全指導者協議会(安全協)の基本となるべき骨格を備えたものであった。また、全農薬安全防除指導員養成の骨子は、研修対象を組台員の子弟、従業員及び関係者とし、研修内容は農薬行政ゃ病害虫防除技術の専門的内容としたもので、修了者は安全を第一の尺度として選定した「安全特選農薬」を農薬使用現場で農薬事故が起きないよう研修成果を活かして普及拡販するといった内容であった。
一方、峙代的背景をたどると、有吉佐和子の「複合汚染」が出版され、農薬に対する批判・風当たりが強くなり、食糧難時代一世を風靡し食糧増産に多大な貢献をしたBHC、DDT、ドリン剤、有機水銀剤、パラチオン剤等が販売禁止となり、「農薬公害」という言葉が生まれ、世間では農薬が社会的に問題となってきた時期であった。
また、農薬使用の現場においても農薬の安全使用の必要性が叫ぱれるようになってきており、流通を扱う全農薬においても農薬安全使用のため何か行動を起こさなければいけない時期であった。
そのため、組合員からは農薬・植物防疫についてしっかりした知識を修得する機会が欲しいという声も上がってきており、農薬について体系的に勉強する研修が求められていた時期と重なった。全農薬ではこれに応えるため、昭和49年10月から社団法人日本植物防疫協会に委託し「国立オリンピック記念青少年総合センター」において植物防疫研修会を開催することにした。
全晨薬事務局の中には果たして人が集まるかどうか不安視する声が多かったが、この研修会の充実した内容と合宿研修の厳しさと楽しさが次第に理解され、組合員にもこの研修が定着し希望者も多くなり不安は一気に解消した。
研修として5年が経過した頃(昭和54年夏)、研修終了者が500人を超え、この結果を待っていた大森理事長の一声で、全国農薬安全指導者協議会の設立総会を来年開催しようということになり、昭和54年1月上野の「池之端文化センター」設立総会が開催され、安全協設立に奔走した佐次一さん(本多農薬)が初代安全協会長に就任した。
なお、商系の農薬安全施策として、「安全特選農薬」を取り扱う事としていたが、農林省(現農林水産省)の指導もあり、「安全特選農薬」を「指導農薬」と名前を変え、ランネート、グラモキソン、パラゼッ卜、カヤフォス混合粉剤の計4剤を取り上げた。
また、同時に「農薬安全推進運動要領」を策定・公表し、日頃の活動の中で「安全一声運動」を推進してきた。農薬安全一声運動のポス夕ーや標語についても組合員からの応募いただいたものを投票により決定し、標語として用いた。これは、組合員の手作りの媒体となって今日も続いている。
代表的な標語
- 1.散布前マスク、服装、確かめて。
- 2.農薬は保管管理が事故防止。
- 3.農薬は正しく使って正しい保管。
- 4.もう一度安全確かめハイ散布。
- 5.確かめようなれた農薬もラベル見て。
安全協事業活動農薬安全推進運動
Ⅰ.農薬安全推進活動
- 農薬の適正使用の徹底
- 農薬の飛散防止対策の徹底
- 「農薬安全一声運動」の実践
- 農薬安全使用のためマスク・防除衣等必着運動の推進 ※1
- 農薬販売者に対する農薬安全管理の徹底
- 農薬使用状況等生産履歴記帳運動の推進
- 農薬の物流における安全性確保の徹底
- 空容器及び残農薬・廃棄農薬適正処理の推進
- 安全協が指定する指導農薬の危害防止対策の実施
※1.マスク・防除衣必着運動
マスク
防除衣
メガネ
手袋
Ⅱ.技術販売体制の強化
- 農薬安全コンサルタント・農薬安全コンサルタントリーダー認定者を育成し技術販売を促進
- 普及展示圃の実施
- IPM(総合的病害虫・雑草管理)など新技術、新分野の導入推進
Ⅲ.一般消費者への農薬安全性広報活動の実施
- 一般消費者を交えた農薬シンポジウムを開催
- 農薬工業会(含む支部)開催の農薬ゼミに協力
農薬安全スローガンの変遷
「第1期スローガン」(昭和54年~平成14年)
- 完璧な技術で 農業をのばそう
- 適正な流通で 農業につくそう
- 安全指導の徹底で 農業を守ろう
- たゆみなき研鑽を 農業に捧げよう
「第2期スローガン」(平成15年~平成25年)
- 法令を遵守し 安全な農作物の確保に努めよう
- 農薬の正しい知識の普及に努めよう
- 農薬の物流管理徹底に努めよう
「第3期スローガン」(平成26年~)
- 農薬は正しく使って安全・安心
- 農薬は作物守る科学の力
- 農薬の技術向上、日々研鑽
農薬安全適正使用ガイドブック
ガイドブック(B5版)は当該年の前年7月末現在すベての登録農薬を収録し、毎年12月に発行しております。当初は安全協会員及ぴ農薬販売店のためのハンドブックとして作成されたものでしたが、版を重ね、今では農薬の安全適正使用の手引・登録情報源として全農薬関係機関、関係企業だけでなく、農薬の流通、農作物の生産に携わる農家まで広い範囲の方々に活用されています。
農薬安全適正使用ガイドブック
媒体品の配布
農薬使用への正しい理解と行動を促す「安全広報ポスター」の制作
当組合が中心となって実施する安全指導者協議会活動の啓蒙、 組合員の意識向上に向けた取り組みの一環として、安全広報ポスターの作成を行っております。
特に近年は、見る人に活動の意義や目指すところが「しっかり伝わる」ことを目的に、年ごとにデザインを刷新して制作しており好評を得ています。
農薬を使用する方への啓蒙・広報活動であることはもちろんですが、近年は一般消費者の農薬使用ヘの関心の高まりにも配慮し、時代背景を考慮しながらより広いターゲットに届くビジュアル表現を展開しています。
■過去の制作ポスター
制作初期の頃に使用していたポスターでは農薬の安全使用のために重視すベきポイントをわかりやすく表示。キツツキをモチーフにしたポスターは標語など細部の変更を行いながら長年にわたり使用されました。
2000年頃、初期の路線から大きくリニューアル。「君を守るために、」のキャッチコピーと子どもたちの写真で「未来、そこに与える影響」をソフトに表現。消賽者のイマジネーションを膨らませ、農薬を使用する者が持つベき貴任感が自発的に生まれることを狙ったシリーズです。
2008年度使用。
「有機農法」、「無農薬野菜」という言葉だけが先行する状況に対しての、やわらかなアンチテーゼ。親近感のあるビジュアルで注目を引き、静かなトーンのコピーで農薬の必要性、有効性を真摯にアピールしました。
2009年度使用。
農薬の必要性と安全使用の重要性を、一つでも欠けると完成しないジグソーパズルの中に書き出しました。「安全使用というジグソーパズルをきちんとはめるよう指導する」というように、ポスターのビジュアルが配布にあたって話のフックにもなりました。
2010年度使用。
農薬が数々の厳しい審査に基づき登録されていることを、「複数のハードル」というビジュアルを使い、かわいらしく一般消費者にメッセージしました。
2011年度使用。
指揮者をはじめ、合唱団を構成する健康な野菜たち。彼らのさまざまな表惰と奏でる歌に、「安全使用」による食の未来への願いを込めています。
2012年度・2013年度使用のポスターは、いずれも「農薬を使用する人の安全」をテーマとしました。安全作業に向けて使用する「4つの装備」を実物写真でアピールし、気づきを与えることが狙いです。
2014年度使用。
農薬安全ひと声運動が目指している人・農産物・環境の「3つの安全」をそれぞれアピールするために、ビジュアルを大きく3分割。それぞれがインパクトを持って見る人の目に入るよう工夫しました。
2017年から2019年のポスターです。
農林水産省の危害防止運動と連動して、農薬のラベルをよく確認し、誤使用に気を付ける事を分かりやすく表現したものとしました。